4 映画『TOKYO TRIBE』-オートレストラン・鉄剣タローの閉店

鉄剣タロー 遠望
埼玉県北部の国道17号と県道66号(JR吹上駅と行田市街を結ぶ)の交差点付近に「鉄剣タロー」というレストランがある。 レストランといっても自販機ばかりで、国道を移動するドライバー向けに24時間営業。
うどん、トースト、ハンバーガーの自販機がそろっていることで知られ、そういう愛好者も多く訪れ、駐車場には他県ナンバーの車がいくつもとまっている。
「鉄剣タロー」という店名は、近くにさきたま古墳があり、そこで出土した鉄剣が国宝になっていることと、「坂東太郎」という愛称がある利根川が行田市の北べりを流れているから。

鉄剣タロー 店内
店内は、仕切りはないが、およそ3区画。
手前にゲーム機。
中央が食事の区画で、壁際に自販機があり、テーブルと椅子が数組。
向こうはがらんとしていて、両替機がこそっとあるくらい。

うどんの自販機
うどんの自販機。
天ぷらがのっていて、唐辛子が器にテープで貼りつけてある。

うどんの自販機 調理中
300円入れると動きだす。
「11秒」とか、時間が表示される。

トーストサンドの自販機
これはトーストサンド。

トーストサンドの自販機 トースト中
220円いれるとトーストされたハムサンドがでてくる。
こちらは秒数ではなく、「トースト中」と表示される。

トーストサンドとテーブルの花
アルミホイルにくるんで加熱されたトーストサンド。
女性店主が店内の長テーブルを作業台にしてパンにハムをはさんでアルミホイルでくるんでいるのを見かけたことがある。 自販機といっても、食べるものが機械からでてくるためには人の手作業がかかわっている。 テーブルには瓶に花が飾られている。 24時間営業のautomobileのためのautoなレストランだが、素っ気なく冷たい感じではなく、やさしい心遣いを感じる。

ハンバーガーの自販機
これはハンバーガーの自販機。

インベーダーゲーム
ゲーム機の区画にはインベーダーゲームもあって懐かしい。 流行の最盛期にはかなり100円玉をつぎこみ、そこそこくらいまではいけるようになったが、久しぶりにためしてみたら、なさけなく終わった。

TOKYO TIBEの壁絵
映画『TOKYO TRIBE』のロケがここで行われた。
監督園子温、出演鈴木亮平、清野菜名ほか、2014年。
架空の都市・東京の池袋や渋谷らしき拠点ごとにTRIBEがあって競っている。郊外らしいところにMUSASHINO SARUというTRIBEがあり、その拠点としてこのレストランがつかわれた。
映画はストーリーより、登場人物のファッションとか、歌や話しぶりとか、街の猥雑な多彩さとか、独特の世界表現を描きたかったのではと思えるほど、ビジュアルににぎやかだった。 このレストランでは、もともとある「オートレストラン」の文字に重ねて「PENNYS」という黄色いネオンサインが掲げられていた。
撮影時に室内に壁に描かれた絵が、今もそのまま残してある。

鉄骨倉庫
国道17号の向こう側、わずかに上り方面に行ったところに妙な鉄骨構造物が見える。
これは映画『ヴァイブレータ』のロケに使われたところで、異質な映画の異質な場面のロケ地がこんな近くにほぼ向き合っているのが不思議。
→[5 映画『ヴァイブレータ』-もとに帰る旅]

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鉄剣タローはユニークなレストランだったが、2020年5月31日で閉店した。 コロナウィルスによる自粛期間中、たまに行きかけたが、密を避けられないということで休業していて入れなかった。 そろそろ再開するかと思っているうち、5月31日付けの埼玉新聞の記事で、「今日閉店する」ということを知った。
休業したまま閉店に直行したので、なごりにもう一度食べてみるということもかなわずに終わってしまった。

* 鉄剣タローは閉店して地図上では確認できない。 セブンイレブン行田下忍店からほぼ西に向かう道が熊谷バイパスに行き当たるあたりにあった。 2020年7月現在ではストリートビューでは確認できる。