九十九里浜南方の川-うぐいすと流竹木[一宮川・夷隅川・塩田川・清水川]

九十九里浜(くじゅうくりはま)は、北は刑部岬(ぎょうぶみさき・旭市)から、南は太東崎(たいとうさき・いすみ市)まで、66kmもの長さがある。国内で、これほど長い距離にわたってすっとした海岸線が続くところは珍しい。
前に九十九里浜の北部にある川のうち、3つをめぐった。
  [ 九十九里浜1:栗山川-「はまぐり、ぜんな、ながらみを採らないで」]
[九十九里浜2:作田川-正月の雑煮にハバノリを]
[九十九里浜3:南白亀川-ポツンポツンと高層住宅]
(それに九十九里浜よりさらに北の利根川河口にも行った。
[利根川-長く焦がれたあこがれの河口]

今度は九十九里浜の南端の一宮川と、そのさらに南の先にある3つの河口に行った。

1 一宮川
□ 太東崎灯台
2 夷隅川
3 塩田川
4 清水川

1. 一宮川
 源流:千葉県長生郡長南町の山間部の房総丘陵
 河口:太平洋(千葉県長生郡長生村)
 延長:37 km

一宮川河口
九十九里浜に沿っている九十九里有料道路を南端に向けて走った。
南の終点からわずかに手前に一宮PAがある。
その休憩所に簡単なレストランがあり、ランチにした。 注文したものを受け取り、2階に上がると、広い窓から一宮川の河口を見わたせる。 河口の間近にPAがあるのって珍しい。
写真は、PAの敷地内にある小高い展望所から北を向いて撮ったもの。
右が一宮川の河口。
東日本大震災後に作られた高い堤防があり、上は遊歩道になっっている(工事など管理用の車が通ることはあるらしい)。
左にある赤い屋根が休憩所。
九十九里有料道路は、赤い屋根のレストランより左にあり、この写真では見えない。

一宮川河口
左岸の堤防の遊歩道を上流方向に少し歩いてから撮った河口と右岸方向。
右岸は、ふつうの陸地というより、長い砂州が延びてきた先端のよう。
とくに何かの用途につかわれているのではない草地のようで、その端でキャンプをしているらしい人が見えた。
川の流れの中央に、変わった形の岩がある。
大雨で河口近くまで岩が流されてくるのはありそうなことだが、ゴロゴロ転がってきたとは思えない形をしている。

一宮川河口
左岸堤防上の道から上流方向。
岸には土砂が堆積していて、それを除去する工事が進行中だった。
土砂のほかにかなり長い竹が流れついてもいるようだ。
一宮川の河口では釣り人もサーファーも見かけなかった。

このあと、少し内陸側に入って玉前(たまさき)神社に寄った。
上総のくにの一ノ宮だが、こぢんまりした静かなところだった。
古い町並みを上総一ノ宮駅あたりまで散歩した。

□ 太東崎灯台

太東崎灯台
一宮川から10キロほど南下すると太東崎(たいとうさき)という高台の岬がある。 長い九十九里浜はここで終わり、行政的にはいすみ市に入っている。
国道128号をそれて細い道を海に向かうと、駐車場があって、すぐのところに灯台がある。
もとはもっと海に近い位置にあったが、崖が浸食されて倒れるのを防ぐために、100メートルほど内陸に移されたという。

太東崎灯台
遊歩道を海岸沿いに向かって歩くと、展望の公園になっている。
太平洋を広く広く見はるかす。
木の間ごしに南を見ると、これから行く夷隅川の河口が見えた。
長い防波堤が海に突き出しているのがわかる。

太東崎灯台
崖のきわに砲台跡というものがあった。
太平洋戦争中、米軍機の飛来を探知するために設置された電波探知機の礎石と説明がある。
もとの本体は直径8メートルほどの円形地下操作室で、すでに海中に崩落したとのこと。
今ここは東向きで朝日を眺められる景勝地だが、かつてはその方角からは攻撃機が飛んできたわけだ。

2. 夷隅川
 源流:千葉県勝浦市の清澄山
 河口:太平洋(千葉県いすみ市)
 延長:67.5km

夷隅川河口
夷隅川は、河口直前で、江場土川(えばとがわ)・三軒屋川(さんげんやがわ)という2つの川が合流している。
右岸、江場戸川と三軒屋川に挟まれた舌状の地形の先端に、今夜予約したホテル、九十九里ヴィラそとぼうがあり、チェックインしてから河口の散策に出た。
岩瀬橋という小さな橋を渡って、右岸の先端部に至る。

夷隅川河口
左岸方向の眺めで、右が海、左が上流。
向こうに見える丘は、さっき行った太東崎。
この小さな写真では確認しにくいが、肉眼では灯台も見えた。
河口にサーファーが数人いて、波を待っている。
今の時間は、川の水が海に流れこむより、海からの波が優勢で、河口より内側まで白い波を立てて押し寄せてくる。
サーファーは沖に向かって波を待ち、これ!という波が来ると乗る。
上手な人が波をうまくつかまえて乗ると、河口よりかなり上流まで滑っていく。
まるで川でサーフィンをしているふうで、珍しい眺めだった。

夷隅川河口
上の写真から振り返って後ろを見た、右岸の砂浜の眺め。
大量の竹が流れ着いている。
河口で流木を見ることはよくあるが、これほど竹が横たわっている風景は、これまでの記憶にはない。
あとでwebサイトで検索してみると、「流木竹を適正に管理するように」とか、「台風後に堆積した流木竹を除去した」とかいうのがあった。
「流木」だけでなく、「流木竹」という言葉があるのを僕は初めて知った。(知ることが遅いのは恒例なのだが)
竹は 房総や九十九里にとくに多いものだろうか。 一宮川で堆積土砂の除去工事をしていたが、そこにも流竹がかなりあった。 (このあと行った塩田川と清水川は短い川で、流竹を見かけなかった)

3. 塩田川
 源流:千葉県いすみ市南部、海岸から内陸部へ1キロほどの近さに水源がある
 河口:太平洋(千葉県いすみ市)
 延長:同一市内を流れて短い
塩田川は同一市内を流れる短い川だが、その沖合では北上する黒潮と南下する親潮がぶつかり合う地球規模に特徴的な位置にある。

塩田川河口
塩田川の河口左岸は大原海水浴場。
右岸には大原漁港があって、河口付近には水産関連の工場や倉庫や商店がある。 左岸の海水浴場の駐車場に車をおいて、河口海岸に出た。
ここでも川からの流れより、海からの波のほうが優勢。
向こうに見える右岸の防波堤に、小さな白い灯台が2つ。

塩田川河口
上流方向の眺め。
手前は海水浴場から続く砂浜。
対岸は大原港に関わる建築物が並ぶ。

塩田川河口
このあたりはアカウミガメの産卵地でもある。

このあと、清水川に行ってから折り返し、北上して戻る途中、大原駅に寄ろうとした。
夷隅川に沿っているいすみ鉄道の起点の駅で、どんなところか見てみたいと思った。
ところが駅は西側に開いていて、海岸沿いを走る国道=東側から向かったら駅前にでるのは簡単ではなくて諦めた。

4. 清水川
 源流:千葉県夷隅郡御宿町
 河口:太平洋(千葉県夷隅郡御宿町)
 延長:同一町内を流れて短い

清水川河口
いすみ市内で完結する塩田川と同様に、清水川も御宿町内のみを流れる短い川。
JR御宿駅のわりと近くを南に並行して流れて、川はまもなく東へ向きを変え、市街地を抜けて海にいたる。
写真は、河口から2番目にある橋から河口方向の眺め。
左はリゾートマンション。(ほかにも数棟立ち並んでいる)
右はウォーターパークの大型遊具。

清水川河口-ラクダ像
前の写真からさらに河口に近づいた位置から。
童謡「月の沙漠」は、加藤まさをという詩人が、学生時代に結核の保養のため御宿海岸を訪れた印象から作詞したといわれる。
この橋の左岸に「月の沙漠記念館」があり、右岸の砂浜には童謡にあるような2頭のラクダ像がある。
橋は記念館と砂浜を結ぶ散策用に架けられているようなのだが、2023年6月には傷んで通行禁止になっていた。

清水川河口-月の沙漠記念館
橋のたもとにある「月の沙漠記念館」に入ってみると、外観の壮大な印象に比べて展示面積、展示物はわずかだった。
もしかと思って開館年をみると、1990年、バブル景気の終わり近いころだった。
バブル期には、必要以上に大きかったり、贅沢な材料を使ったりした建築がしばしばあった。
もうずいぶん前になるが、「御宿」というと夏のリゾート地としてきらびやかなイメージがあった。
今は訪れる人もずっと少なくなり、次々に建ったマンションでも高齢化が進み、にぎわいはすっかりしずまっているようだ。

清水川河口
さらに先に歩いたところ。
「月の沙漠通り」という海岸沿いの道に沿って防波堤がある。
その外側の砂の堆積の間を川が流れて、わずか先で海に入っている。
砂の堆積の具合や、潮の干満により、川が海に入る地点は移動しそう。
砂浜の向こうに何人ものサーファーが見える。
6月半ばの海は冷たくないのだろうかと思うけれど、日射しはやわらか。
広々、のびやかで、心地よい。
このあと、市街地に入って、小さな御宿駅に行ってみた。 近くに旧旧役場跡があった。 建物はすでにないが、かつて役場の庭にあってしたしまれていたという大きな蘇鉄が今も堂々と根づいていた。


  ◇     ◇

九十九里浜の南方の河口をめぐって気がついたこと。

1 流竹木が多い
房総半島中央部には竹林が多いのだろうか。

2 釣り人がいない
この2日間、どの川でも釣り人を見なかった。
釣り人の熱情というのはたいしたもので、暑さ寒さとか、便不便とか、関わりなく、あちこちの河口でよく目にする。
ここでは豊かな漁場であるだけ漁業権がしっかり確保されていて、勝手に釣れないのかと思う。

3 ウグイスが鳴いている
この2日間に行った川では、どの川でも(だったと思う)ウグイスが鳴いていた。
ウグイスは内陸の林や草地にいるものと思っていたから、これほど海辺で鳴き声を耳にするなんて驚かされた。
それぞれ少しずつ特徴ある鳴き方だったのもおもしろかった。
(2023.6)